~インフラ巡り:東京動力機械製造株式会社地下工場跡~  建設調査課 田中

建設調査課の田中です。
みなさま、「インフラツーリズム」という言葉をご存知でしょうか?
ダムや橋梁、トンネルなどのインフラ(公共施設)を観光資源とする取り組みで、国交省がポータルサイトを開設するなどかなり力を入れております。
最近だと群馬県「八ッ場ダム」や埼玉県「首都圏外郭放水路」の見学ツアーなどが度々テレビでも取り上げられており、徐々にインフラ好き?の人が増えてきているように思われます。

先日、自分もインフラ見学ツアーに参加してきました。
栃木県那須烏山市神長にある「東京動力機械製造株式会社地下工場跡」です。
現在は島崎酒造が酒蔵として活用しており、通称「どうくつ酒蔵」と呼ばれているようです。
ツアーは島崎酒造の方がガイドを担当しており、土日に開放、平日でも予約をすれば開放してくれます。

↑隧道入口
入口部の側壁・アーチを覆う丸太は支保工で、後から補強で追加整備したとのこと。

↑隧道内部
前日まで雨だったせいか、しっとりとして靄がかかっていました。
隧道内は常に10℃±5℃に保たれているそうで、夏でも寒いくらいです。

「東京動力機械製造株式会社地下工場跡」は人力だけで素掘りされた隧道群になります。
高さ・幅共に3.5m程度あり、総延長は600mにも及んでいるそうです。

この隧道は第二次世界大戦末期(S20)に戦車製造のため地下軍需工場として建造されましたが、完成と同時に終戦を迎え、結局戦車が製造されることはなかったそうです。
島崎酒造の会長は、子供の頃に掘削工事に参加したそうで、完成日に校庭で玉音放送を聞いたとのことでした。
せっかく苦労して掘ったのに、と、きっと空しい気持ちだったに違いありません。

↑天井アーチ部には荒々しい手彫り跡
地質は凝灰質砂岩で軟岩に相当し、掘削に爆薬がいりません。とはいえ、やはり手掘りは大変な苦労を伴ったはず…

↑ガイドさんが詳しく説明してくれます…お酒のことを(笑)
隧道の説明を1とすると、お酒の話が5くらいありました。熟成古酒に興味のある方にはいいかもしれません。

↑入り口付近に土木学会選奨土木遺産の認定書石碑
2012年に認定されたそうです。
「意匠・技術力を超越した迫力が感受される土木遺産であります」という一文には納得。

巷には素敵な建造物がたくさんありますが、土木遺産や文化財として登録されているにも関わらず、一般向けに情報が出ていなかったり開放されていない施設が多いのが現状です。
実際、行っても見られずに帰ってくるということもしばしばありました。(長野県松本市の釜ヶ淵堰堤や、新潟県山古志村の中山隧道など)
インフラツーリズム熱が冷めやらぬうちに、今回の隧道の様に、一般向けに整備されて開放される建造物が増えるといいなと思います。