電気工事課コラム 〜工場のLED化のポイント〜

水俣条約で2021年からすべての水銀灯が製造・輸入禁止となり、工場のLED化を検討している千葉県の事業者の方は多いでしょう。とはいえ、いざLED化といってもどれくらいの費用効果があるのか分からず、そもそも現場に適した明るさもイマイチ不明ということも少なくありません、LED化は長期的な電気代の節約につながり、4年ほどで工事費を回収できる効果が見込めます。そこで千葉県の工場でLED化をするポイントを解説していきます。

 

1.現場に合った明るさとは?

太平洋ベルトの中枢を担う京葉工業地域の中心地となるのが千葉県です。首都圏ゆえに近隣にはライバル企業も多く存在し、それゆえに千葉県の工場で生産される製品は当然ながら高品質を求められます。その一歩として工場内の作業場の明るさを確保し、細かい作業や外観検査をやりやすくする照明のLED化が必要といえるでしょう。

工場のLED化ですが、照明の明るさも作業内容別に異なります。JIS照明基準(JIS Z 9110:2010)によると作業内容や空間によって推奨照度を定めており、精密機械や電子部品を扱う極めて細かい視作業や一般の工場では維持照度が異なります。

1-1.作業内容によって照度は異なる

作業内容によって異なる照度一覧は下記になります。

・極めて細かい視作業…1500ルクス 精密機械や電子部品の製造、印刷工場での作業

・細かい視作業…750ルクス 繊維工場での選別や検査。印刷工場での校正や植字、化学工場での分析など

・普通の視作業…500ルクス 一般的な製造工場での視作業

・粗な視作業…200ルクス 限定された作業

・ごく粗な視作業…100ルクス 限定された作業

一般的な作業より細かい視作業になるほど照度が高くなっていきます。ただ、製造される製品精度によっては、一般的な明るさではスリキズや打ちキズ、割れといった欠陥を見つけるのが困難というケースもあり得ます。その場合は明るさを増したLED化を検討するほうが無難です。万一にも欠陥品を納品してしまったとあれば、企業の信頼に関わる可能性は否定できません。

1-2.高齢者の多い職場では明るさが必要

高齢化社会に入ることで現場にも正社員だけでなく、パート従業員も含めると年齢層が上がってベテラン作業者が多いという工場も少なくありません。年齢を重ねるとどうしても網膜まで届く光量が減少しますので、作業場にも高い照度が求められます。明るさが十分でないと、作業精度が劣るのはもちろんのこと、よく見ようとして肩や首に力が入って姿勢が悪くなり、健康状態までもが悪化してしまいます。働き方改革で高齢者を積極的に採用している工場もあるでしょうから、高齢者が集う職場に適した明るさも必要といえるでしょう。

現在のところは明るさに不備がないという工場でも、長寿命のLED化を実施しておけば、蛍光灯や電球の予備を多く蓄える必要もありませんし、長期的な電気代の節約にもなります。一般的な照度を参考にしながら、自社工場の現場に合った明るさを活用するようにしましょう。そのためにも蛍光灯をLED化するのがおすすめといえます。

2.どのような環境下で使用するか?

工場内でLED化を考えていく場合、使用環境によってタイプを選択しなくてはなりません。工場内の部署によっては過酷な環境下の中で作業するケースも見受けられます。特に千葉県は石油製品・石炭製品・化学工業の出荷額が全国1位を占めており、各工場でも高温・湿度といった面であらゆる対策を練っているものです。

工場のLED化でも同じように一般家庭で使用されている通常品のみを使用するのではなく、環境別にどのように使用するべきかみていきましょう。

2-1.屋内

屋内で使用する場合は通常品を使います。設備のクーラントがミスト状となって油成分が飛散しない工場では通常品で済ませられます。また、工場内の通路では危険か所がいくつも存在しているものです。カーブや通路脇の積荷で見通しが悪い場合は視認性がよいLED照明に切り替えるようにしましょう。

工場内には高い天井に照明が設置されているケースもあります。現場の作業者に十分な明かりを届けるためにもLED化は重要といえます。

2-2.屋外

屋外に設置する場合、気候の変化に対応できる耐候性が高いLEDが求められます。屋外で使用する蛍光灯は太陽光や紫外線、温度の変化によって変形・変色し、劣化が進みやすくなります。そのため、屋外の照明をLED化する際にも耐候性に優れた商品を選択するようにしましょう。

また、屋外で使用する照明器具には虫がちらつき、死骸も増えるなど衛生面や環境面はもちろん、虫の死骸が搬送される製品に混入するケースもあります。LED化になると虫は寄り付きにくくなり、作業者の精神面でも負担が楽になるでしょう。
24時間の工場では駐車場への出入りが深夜や明け方になるケースもあります。事故防止のためにもワイド配光や広角配光のタイプが適しています。

2-3.湿度

湿気が多い場所や雨水などの水分が入るような場合、防雨防湿性能のLEDがおすすめです。器具に水が浸入しないように設計されているものから、万一水が浸入しても外へ排水する仕組みが施されています。また、湿気が多い場所ではさびの発生を抑えます。

一般的な照明だと水分が入った時点でショートし、漏電の危険もあります。漏電すると労働災害のリスクが高まるので危険です。湿気の多い場所では早期のLED化が重要といえるでしょう。

2-4.高温

製鉄所や鉄工所などの工場では80℃ほどの高温環境で使用することがあります。通常品では耐熱処理がされておらず、使用できないことや使えても劣化が早くなってしまいがちです。そもそも照明だけでなく、カバーや配線も高温に耐えないといけません。高温耐久性に優れたLED照明器具を使用すれば、高温環境の職場でも長時間の使用が可能となります。

2-5.防爆

工場内で可燃性物質による爆発や火災のリスクが高いエリアは防爆仕様のLEDを設置しないといけません。危険場所にはそれぞれ「特別危険場所(0種場所)」「第一類危険場所(1種場所)」「第二類危険場所(2種場所)」と3つのエリアに分かれています。

1.特別危険場所(0種場所)は、連続して爆発性雰囲気が存在していますので、0種場所には照明器具や配線、スイッチを設けないようにします。

2.第一類危険場所(1種場所)は、0種場所ほどではない爆発性雰囲気がしばしば存在する可能性があるエリアです。一般的な照明器具を配置すると爆発事故を発生する危険性が高くなります。安全な防爆仕様の製品を設置することは可能となります。

3.第二類危険場所(2種場所)は、爆発性雰囲気がほとんど存在せず、万一発生しても持続性がないエリアを差します。ここでは安全な防爆仕様はもちろんのこと、簡易的な防爆仕様の電気機器を設置することができます。

2-6.目視検査

オフィスよりも明るい設計(750ルクス以上)が必要となります。製品の外観検査や選別は場所によって暗いエリアがあってはいけません。500ルクスで十分と考えていると、工場のレイアウトによっては作業スペースに照明の光が十分行き届いてないこともあり得ます。目視検査が必要な作業場には一般レベルよりも明るい750ルクス以上で設置するようにしましょう。

作業者が手に取って製品のチェックをする場合、作業台に設置した蛍光灯を自分で動かすこともあります。このようなケースではアームを自在に動かせるタイプがおすすめです。また、高齢者の多い職場では通常よりも照度を高くするなど工夫が必要です。

2-7.オフィスワークなど

通常の明るさ(500ルクス以上)で十分といえます。会議室や食堂のほか、通路や階段などに使用できます。また、工場内の作業スペースでもホワイトボードを活用しているミーティングエリアは、「多少暗いがわざわざLED化をしなくても大丈夫」という部署もあることでしょう。

しかし、引き継ぎの連絡ノートや作業進捗の確認グラフといった文字を見る機会もあるので、明るいに越したことはありません。さらに、通路や階段のLED化も「そこまで安全や品質に関わることではないので後回しでいい」と考えているかもしれません。しかし明るさは清潔感を映し出します。綺麗な工場・職場で働いていると働く人の気持もきれいになると同時に5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の面でも効果が見込まれるでしょう。

3.検討でわすれがちなこと

工場のLED化を検討する際に忘れがちなのがリモコンとセンサー関連です。LED照明に切り替えるだけでなく、その先の利便性を求めていくように心がけていきましょう。

3-1.リモコン

工場内の空調温度を一定に管理する機能を取り入れている工場もあります。照明も同じように事務所側で管理し、明るさをリモコンで操作することが可能です。照明を無線で調光するので、工場内の安全パトロールなどで明るさが足りないと分かればその場で微調整も可能となります。レイアウトや作業スペースが変更になった場合もリモコンで操作可能ですから利便性がはかどります。

また、24時間フル稼働の工場を覗き、多くの工場では作業時間が決まっており、休憩時間や深夜帯(夜間稼働しない場合)や休日帯にムダな電気代を抑えたいと考えているものでしょう。

ただ、工場内の作業者に任せておくと消灯を忘れる可能性があり、丸一日中明々と照明が点きっぱなしとなり得ます。これを防ぐには決まった時間に消灯・点灯するようなタイマーをリモコンと連携させることができます。

消灯・点灯時間をパターン化することでダラダラと時間をかけて作業することもなく、ムダな残業を抑えて効率よく作業できるよう省エネ化を図れます。

3-2.センサー

LEDが省エネとはいえ、人の出入りが少ないエリアでは常時点灯し続けるのはムダになってしまいます。通路や出入口付近にセンサーを設置し、人を感知することで照明を点灯するようにすれば、光熱費を抑えられます。

別途費用がかかるからと疎かにしてしまうと、そのまま照明を点けっぱなしになり、結果として電気代の節約になりません。また、LED化になったからといって照明のON/OFFを徹底しないと作業者の環境に対する意識も低下してしまいます。

リモコンで簡易的に切り替え、センサーで自動的に点灯・消灯するようにすれば、作業者の意識も変わっていきます。更衣室のエアコンの点けっぱなしを防ぎ、ゴミの分別、防身の回りの不要なものを片付けるといった環境面でプラス的な意識付けにもなるでしょう。5Sを意識して維持徹底するようにもなるので、結果的に照明だけに限らず、作業効率を上げる効果も期待できます。

3-3.誘導灯と非常灯

普段の作業中にはあまり気づきませんが、誘導灯と非常灯のLED化も忘れてはいけません。誘導灯や非常灯は普段利用することがないものですが、火災や地震などの有事の際に誘導灯は避難方向を示すために必要ですし、非常灯も停電時に点灯しないと意味がありません。

誘導灯や非常灯も経年劣化してしまいます。普段使用しないのでLED化には工事費がもったいないと考えてしまわず、万が一に備えて誘導灯と非常灯のLED化も検討するようにしましょう。

4.いくらが妥当か?

LED化を検討する際に一番気になる点はやはり費用対効果ではないでしょうか。一般的にLED化になると電気料金がお得になるというのは認識していても、投資金額に対して工事後の消費電力が分からないとなかなか動くこともできません。

4-1.一般的な工場でのLED化の費用効果

一般的な工場で1日に8時間照明を使用する高天井照明器具(400W水銀灯)を20台更新する場合をみていきます。

・高天井照明器具は1台あたり415Wから140Wに省エネ化

・消費電力の差880kW

・工事費 約1,200,000円(現場条件により異なる)

・1年間の電気料金の差額278,554円(1kwあたり26円として計算)

この計算でいくと、工事費にかかるコストは120万円ですが、4年半ほどで回収できることになります。

工場には繁忙期があるでしょうから、実際には残業や休日出勤もありますので、上記よりも早く回収できるでしょう。このようにLED化には初期投資のコスト以上に費用効果が見込めます。

4-2.高天井の照明は交換費用がかかる

先述したLED化の一例はあくまでも1年間当たりの算出ですが、使い続けると数年ほどで寿命となってしまうことから交換コストが発生してしまいます。交換する照明ランプの費用はもちろんのこと、高天井作業となると工場内のレイアウトによっては安全面から作業を一旦停止しなければならない場合もあります。

LED化は他のランプよりも長寿命なので交換費用も低減できますし、交換頻度が少ないことで作業停止による生産性の低下や高所作業の安全面でも優れています。

4-3.コスト削減によって数年で事業への設備投資も可能

先述した計算では年間で約28万円の節電効果が出ています。コスト削減によって4年ほどで工事費を回収できるだけに、その後は浮いた経費を事業の設備投資に回すことが可能です。

省エネを図ることでこれまで改善できなかった案件にも予算を回すことができますし、機修費や間材費を追加して設備の保全やメンテナンスにも力を入れられます。現場の作業者がやりやすいように改善を図れるのは最大のメリットといえるでしょう。

5.明るさの効果検証

工場をLED化した場合、工事前と工事後の明るさを測定します(ルクス測定)。LEDに変更したエリアで照度計を用いて測定していきます。明るさの検証では水平面の照度を測定し、記録を取って確認していきましょう。

5-1.現場の作業に適した明るさか確認し、作業者の意見も参考に

工事前のルクス測定を見ると、意外にも照度が低い場合があり得ます。現場の作業場所に適した明るさにはLED化が適しています。工事後のルクス測定を確認すれば一目瞭然といえます。

現場作業者の意見も重要です。いくらLED化して電気代が節約できたといっても、肝心なのは現場作業者の体感となります。実際に作業してみて見えやすくなっているか、明るすぎないかなどの意見を参考にしましょう。

工事エリアが工場内の一部のみに絞った場合や他に第2・第3工場と複数ある場合、これらの明るさの効果検証は次のLED化に向けて貴重なデータとなります。実際のルクス測定に合せて現場の意見をまとめて記録するようにしましょう。

5-2.明るい職場は従業員のモチベーションが上がりやすい

作業場が明るいとこれまで気にならなかった汚れが目立つようになります。工場では5S3定を教育しているものですが、薄暗い環境でははっきりいって浸透しづらいものです。

LED化を図ることで職場が明るくなれば設備の汚れが目立ち、棚や作業台の乱雑さも嫌でも目に入ります。これまで気にしてなかったことが明るみになることで、今まで以上に5S3定を気に掛けるようになっていきます。

また、工場の管理者にとっても明るい職場のほうが5S3定を維持管理しやすくなるものです。環境が変わることで従業員のモチベーションも上り、生産性向上につながっていくことが期待できるでしょう。

6.当社での施工例

<工事ケース1> 橋形クレーン投光器

 
______500W投光器 5台              LED投光器 5台

LEDに交換したクレーンは明るくなっただけでなく、消費電力も73%削減できました。1日平均3時間点灯、年間240日稼働、1kw26円とすると、クレーン1基あたり年間で約29,000円のコストダウンに成功しました。暗くなってからの安全性が高まると共に作業効率改善されました。

 

<工事ケース2> 屋内ベースライト

 
_____1台あたり72W:12台            1台あたり24.9W:12台

同等の明るさの照明器具を選定したため、LEDに交換していない部屋と交換した部屋で明るさの大きな違いは感じられませんが、消費電力を65%削減できました。1日平均8時間点灯、年間240日稼働、1kw26円とすると、1部屋あたり年間で約28,000円のコストダウンに成功しました。ランプ交換の手間も無くなるので管理が楽になりました。

7.国および千葉県の補助金について

工場のLED化に伴い、国や千葉県で活用できる補助金や助成金について紹介していきます。

2020年には経済産業省の「省電力補助金」が中小企業も高効率照明での申請が無くなってしまい、LEDで国からの補助金が期待できなくなりました。

補助金や助成金は今後も変わる可能性がありますので、随時国や自治体の情報をチェックすることをおすすめします。2020年に申請可能だった補助金・助成金、そして2021年以降も申請できそうな事業をみていきましょう。

 

①廃棄物処理×脱炭素化によるマルチベネフィット達成促進事業(環境省)

環境省が実施している事業で、その目的は2つあります。1つ目は廃棄物エネルギーを発電などによる有効活用して化石燃料を削減し、脱炭素化を社会全体で進めるために行います。2つ目は災害廃棄物の受入に関する地元自治体との協定締結や地元産業のエネルギー供給などによって地域環境共生圏の構築を促進するとあります。

照明器具にPCBが使用されている場合、LED化によってCO2が削減できる効果が期待できます。中小企業等に限定されますが、PCB廃棄物の早期処理における災害時の環境汚染リスク低減や省エネ化によるGHG(温室効果ガス)の排出削減が確実な事業に対し、LED化への調査費用と交換費用の一部を補助(リース導入も可)できます。

 

②省エネルギー設備導入促進事業補助金(中小企業向け:千葉市)

千葉市では地球温暖化対策を推進していますので、市内の事業所に省エネルギー設備を導入しようとする中小企業に補助金が交付されます。

高効率照明は経費の1/3で上限が100万円となっています。

2020年(令和2年)の9月末で募集が締め切られていますが、2021年も継続して補助金申請が期待できます。

 

③LED照明等節電促進助成金(東京都)

東京都に本社を置く企業(製造業)のみが対象ですが、千葉県に工場を持っていれば申請可能です。製造業を営む中小企業の内、LED照明器具などの節電につながる設備を自社工場に設置する際に発生する経費を助成します。

2020年度(令和2年)の募集は締め切っていますが、助成対象の経費は1/2以内で上限額も1,500万円となっています。

 

④松戸市事業用省エネルギー設備等導入促進事業費補助金(松戸市)

千葉県松戸市では環境負荷の低減を図り、エネルギー利用の効率化や最適化を目的とした事業用省エネ設備の導入に対し、補助金を交付しています。

2020年度(令和2年)の事業補助金になり、松戸市内の事業所で省エネ診断による設備改修などの実施によって水銀灯をLED化にすることが対象となります。

事業経費が40万円を超えるものに対しては最大40万円が補助されます。

まとめ

工場内では現場に合った明るさが法律で定められており、作業内容によって照度が異なっています。工場や部署の特徴によって屋内や屋外、防爆といったさまざまな環境下で使用するLED照明も変えていきます。

工場内のLED化ではセンサーやリモコンといったオプションを付けると利便性を図れ、有事の際に必要な誘導灯や非常灯もLED化を忘れることがないように気を付けましょう。

一般的な高天井のケースでも費用効果は抜群で4年ほどで工事費を回収できる計算となっています。実際に千葉県の工場をLED化するにも補助金や助成金を活用できるケースがあるので、国や自治体での補助金情報をこまめにチェックすることでよりコストを削減できます。

自社工場で省エネ化を図ると節電効果はもちろんのこと、顧客にとっても省エネ化を図っている工場として周知されていきます。工場のLED化は企業のイメージアップにもつながりますので、積極的に検討してみてください。